わたしには忘れられない思い出のラーメンがある。
まだ娘も小さく息子も抱っこで移動するぐらいに小さかった頃、母と姉弟と家族で旅行で北海道を訪れたのだ。
小樽や札幌など平凡なバスツアーだけど自由時間が多く時間の許す限りを走るように回った。
楽しかったな。
「札幌にきたら本場の札幌ラーメンだね!」
家族で張り切って商店街の中を歩きお店を探すものの良さそうな店は行列ができている。
空腹で歩き疲れて行列に並ぶのもちょっと、と思っていると空いているお店があった。
わたしたち家族は有名店のラーメンや最高に美味しいラーメンを求めているわけではない。
グルメじゃない。
ただ、普通に札幌ラーメン美味しいねっ、やっぱ本場は違うなって言いたいだけ。
家族で味噌ラーメンを注文し出てきたラーメンに戦慄を覚えた。
獣臭いのだ。あれ?これなんの肉?
とにかく臭い。
熊か?鹿か?いったい私たちは何の肉のチャーシューを食べているのだろう。
店内は私たち家族だけで静まり返っている。
店主が居る前では話せない。私たち家族は目と目で会話をした。
臭いだけでなく味もまずかった。衝撃の不味さだ。
ラーメン激戦区のこの立地になぜこのラーメン屋が生き残っているのだ!と当時は自分たちの不運に憤り嘆いたものだ。
そしてみんなで腹の底から笑った。
さて、令和2年、西暦2020年。
新型コロナウイルス感染が日本中を駆け巡り引きこもりの日々を過ごす年末年始。
あのラーメン店が生き残っている!
あの思い出のらーめん!
レビューを読むとボロクソの感想を書かれている。
安定の不味さは今もご健在の様子。
不思議なことにレビューを読むうちに北海道旅行の楽しかった思い出がよみがえり、忘れていた気持ちが溢れ出した。
ラーメンが美味しかったらここまで記憶に残らなかっただろう。
不味かったのが家族旅行の思い出として正解だったのだ。
実際に宿泊したホテルの食事は美味しかったはずだけど記憶に残っていない。残っているのはサービスの良さだけ。
レビューを読むと美味しいと書いている人もいる。
もしかしたら私たちは訪れた時間が悪かったのかもしれない。
潰れないで生き残ってほしい。
次はチャーハンを食べたいんだから。
思い出の続きをたどりたいんだから。
忘れられない味になるのか。新しい思い出を作るのか。
また母と姉弟と家族で札幌まで確かめに行きたい。